2019年7月29日月曜日

合わせ木

くすのきばこ 2000年



木をつかってものをつくり始めたのは22年前になります。
卒業後、陶芸関係の仕事を探していたのですが、いい働き口がなく、結局、京都にある扇子屋で働きはじめました。
仕事場と家との往復する毎日で、創作活動を全くしない日が2年ほど続いたのですが、そんな生活は、自分の根幹みたいなものが少しずつ失われていくような気がしてきて、だんだんと気持ちが不安定になってきました。
なにをどうしたらいいかわからず、休みの日はスケッチに行ったりしていたのですが、どうもすんなりいかず、悶々とした日々を過ごしていました。
そんな中、そういえば短大時代に彫塑教室という授業で、木の塊から自分の足を彫るという課題があり、その時の木の感触や彫っていきながらかたちを成形することがとても楽しかった記憶があり、もしかしたら、自分は木という素材が向いているんじゃないかと思い、ホームセンターで買った鑿と、小さな玄翁を家に持ち込んで木っ端をもらって器のようなものを作り始めました。
それからむやみやたらに器を彫っていくのですが、あのときは、ものの固まりでありながら器という形状である違和みたいなものを追い求めてつくっていたような気がします。
食器などつくることには興味がなく、やはりオブジェのようなものをつくっては公募展に出展したりしていました。
鹿児島で行われた公募展では小さな賞をいただけたりして、闇雲につくっていたものに、なにか認めてもらえたような気がしてとても嬉しかった記憶があります。

あるとき、制作中、器のある部分がどうしても足りないような気がして、木を剥ぎ合わせて足していくようになりました。剥ぎ合わせて仕上げた表面の表情がとても魅力的で、なんだか意味もなく「これでやっていけるかも」みたいな気持ちになりました。
これがいまでも行っている「合わせ木」というもののはじまりでした。
「合わせ木」という手法は木と木を剥ぎ合わせるとき、貼り付ける表面を有機的な形(鑿などででこぼこ)にして、貼り付けるもう片側を少しずつ形を合わせながら削っていき、接着剤で剥ぎ合わせるものです。切り出したときの貼り合わされて見える線が有機的に見える独特な手法になります。
これを使えば、大きな木を手に入れなくても、小さな木を貼り合わせていけば、どんな大きさのものでも制作できます。手間はかかりますが、今でも技術的に困難なものをつくる際、合わせ木という手法を用いることによっていろいろな課題を乗り越えてこれた気がします。




つづく

木の壺 2006年